「第28回東京民草の和をつなぐ会」では、日露交流についてお話ししました。
講義の中で、幕末、福井藩主松平春嶽に仕えた橋本佐内の書簡を紹介しました。
橋本佐内書簡(現代文訳)
「かのイギリスなどは、きわめて粗暴剛強な気風を有し、我が国の防備手薄なところを見つけ上陸を強行する暴挙に出ましょう。これを撃退できたとしても、国内の騒動に乗じて外国軍に内応する不届き者が出てこの上ない危機になりましょう」(三条実篤宛)
「イギリスは将来、必ずや我が国に対してロシアを攻撃する先陣の役を頼んでくるか、あるいは蝦夷・函館をイギリスの軍事拠点として借り受けたい旨願い出てくるものと存じます」
「今の日本は力不足で、今のうちにしかるべき国と同盟国の関係になっておくのが得策でしょう。その場合、イギリスとロシアは利害の対立する強国で並び立つことはできません。是非ともロシアと同盟するべきと考えます。それはロシアは信義のある国であり、国境を隣接し唇歯のように利害関係の密接な国であるからで我が国から和親を申し出ればロシアはありがたく思うでしょう。」(村田氏寿宛)
はたして、佐内の深憂のごとく、英国の謀略に身を売った親英派が明治維新政府にはびこり日露戦争へと日本を誘導しました。また、現在は、同じアングロサクソンの米国が対露戦略に日本を利用するため日本を軍事拠点としています。
橋本佐内の啓発録には、「交友を択ぶ」という説がありますが、個人だけではなく国家においても、交わる国を誤ると亡国の危機に立ちます。根本において価値観を異にする米英アングロサクソン国との交流はまさにそれです。近現代日本の国際関係史を教訓とし、民族としての文化価値を共有できる国との関係を大切にしなくてはいけません。

「東京荒谷流武道教室」では、人の生死にかかわる武力を身に着けるということは、それを個人の能力としてではなく公共の目的に使うという覚悟が必要であるということをお話ししました。凡そ、日本の武道は己の生死を忠孝に捧げる道で、自らを家、郷里、国家など帰属する日本の歴史の一部として全うすることに人生の喜びとする生き方です。参加者の皆さんには、そうした生き様を具現できるよう祈念して稽古をしました。